健康経営相談Q&A

健康経営・メンタルヘルスの重要さやポイントは?

  • 生産性向上
  • メンタルヘルス
  • 社内制度


近年、従業員のうつ病などのメンタルヘルスの問題が多く取り上げられ、「健康経営」「働き方改革」という言葉を目にする機会が増えましたが、そもそもそんなに大切なものでしょうか?
会社として取り組むには費用がかかるように見えますが、それだけの費用対効果が見込めるのでしょうか。
何に取り組むのが近道でしょうか。

アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム

職場のメンタルヘルス、企業の健康経営を考える上で、「アブセンティーイズム」「プレゼンティーイズム」という概念が注目されています。
アブセンティーイズムとは、病気や体調不良などにより欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、業務に就けない状態のことをいいます。一方、プレゼンティーイズムとは、「出勤しているにも関わらず、疾病等の問題により業務能力や生産性が低下している状態」です。

従来、企業における従業員の健康に関連するコストというと、医療費対策や医療費ばかりに目が向けられてきました。
また、最近ではうつ病などの疾患による休職者が増加しており、アブセンティーイズムによる損失も問題視されています。
しかし、経済産業省平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「健康経営評価指標の策定・活用事業」東大WGの成果報告書によると、企業における健康関連コストの中で最も大きな割合を占めているのは、「出勤はしているけれど何らかの健康問題によって生産性が低下しているために生じる損失」つまりプレゼンティーイズムによる損失が最大のコスト要因になっているということです。
以下のグラフを見ると、プレゼンティーイズムによる損失の割合は、77.9%。アブセンティーイズムによる損失の17倍以上なのです。

さらに、プレゼンティーイズムにもっとも相関しているのは生物学的リスク(各種健診の値など)や生活習慣ではなく、主観的健康感やストレスといった心理的リスクだということも分かっています。
プレゼンティーイズムの発生を抑えるためにも、企業のメンタルヘルス対策は必要不可欠となっています。

また、プレゼンティーイズムがより深刻なのは、それが周囲に影響を与えるからです。
ただの風邪気味な状態であっても、無理に出社すれば職場のほかのメンバーにうつしてしまう恐れがあり、また、何かだるく集中できない状態で出社すれば、周りに悪影響を及ぼします。そうなれば、組織全体のパフォーマンスに支障をきたすでしょう。
さらに、無理に出社を続けて症状が悪化すれば入院や長期欠勤といった事態に陥り、医療コストがかさむ恐れがあります。

とはいえ、日本人にとって「勤勉は美徳」であり、多少の風邪気味やだるさなら体調不良を押して出社するという人は、決して珍しくありません。
欠勤・休職=アブセンティーイズムは日常の職場生活の中でさほど頻繁に起きることではありませんが、プレゼンティーイズムは日頃からあたりまえのように発生しています。

企業の生産性の向上のためには、アブセンティーイズムだけでなく、プレゼンティーイズムという目に見えにくい損失をいかに抑えるか――企業と社員双方の意識改革が大きな課題となるでしょう。

最も大切なのは、アブセンティーイズムでもプレゼンティーイズムでもない人、すなわち生産性高く頑張っている社員がきちんと評価されることであり、そのためにはまず、就業規則などを見直して整備しておくことが必要です。