健康経営相談Q&A

ノルマ達成時に多額の賞与を出しても従業員が辞めてしまいます。なぜでしょうか?

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営業の部署にノルマを課しています。
そしてそのノルマをクリアすると賞与が多く支給され、逆にクリアできないと賞与がなくなる、または降格などのペナルティが課されるようになっています。
一見シビアですが、やればやるほど賞与が上がり良い制度と考えていましたが、どうもうまくいっていないようです。
結果が認められ、頑張りによっては半期の賞与が数百万と支給されるにもかかわらず、従業員がどんどん辞めていきます。
どうしてそのようなことが起きるのでしょうか。

報酬とモチベーション

心理学者のマーク・レッパーとデイヴィッド・グリーンは、「報酬」と「動機」にして実験を行いました。

彼らは、実験対象として幼稚園を選びました。
実験内容は、子供に自由時間に絵を描いてもらうことです。
子供は、以下の3つのグループに分けられ、条件を付与されます。
グループ1:絵を描いた後、あらかじめ賞がもらえることがわかっている
グループ2:絵を描いた後、賞がもらえることは知らないが、賞を付与される
グループ3:絵を描いた後、何ももらえない

実験から数週間後、再度、子供に用紙とペンを渡しました。
結果は、以下のようになりました。

グループ1:子供は絵に対する興味を大幅に失い、絵を描く時間が大幅に減少
グループ2:やや上昇
グループ3:ほぼ変化なし

結果として、あらかじめ賞がもらえることがわかっていたグループAのみ、子供に「悪い」変化が表れたのです。
つまり、「報酬」を与えたことで、「遊び」が「(義務的な)仕事」に変質したのです。
企業においても同じことが言えるでしょう。
つまり賞与をあらかじめ支給することを明示して業務をアサインすると、長期的にみるとモチベーションが下がってしまうのです。

では従業員のモチベーションを上げるためにはどのようにすればいいのでしょうか。
一例として、行動科学的な視点から解説してみます。
まず、『モチベーションが高い状態』とはどのような状態でしょうか。
目の色が変わって仕事をしている状態?仕事への意識が違う状態?
いろいろと意見はあるでしょうが、行動科学的には、『モチベーションが高い状態』とは、仕事行動が高頻度で発生している状態であると考えます。
では、その仕事行動を増やすためには、どのようにすればよいのでしょうか。

それは、仕事行動が起こった際に、その人にとって何らかの『良いこと』が起きればよいのです。このことを行動科学では、強化と呼びます。
原則として、この『良いこと』は、行動が起こった直後に起きることが最も望ましいです。(ただ人間は言葉による振り返りができるため、最長で2週間ぐらいまで効果が期待できます。)

そのように考えた場合、賞与はどういう位置づけになるでしょうか?
年2回程度賞与を支給している会社が多いかと思います。
凄く頑張って仕事行動を増やしても、強化されるのは半年後です。
これでは仕事行動の増加はあまり期待できません。

半年ごとに強化するのではなく、例えば大入り袋のように凄く頑張った時にすぐにほめることができる仕組みを社内に導入すればいいのです。
大切なのは、望ましい行動が見られたときに即時に強化することです。
社内制度作成の際に参考にしていただければと思います。