在宅勤務中の従業員に対して、オンラインで産業医面談を実施することは問題なのでしょうか?
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在宅勤務をせっかくしているのに、産業医面談のためだけに出社をさせるのは本末転倒であるという意見もあります。実際、産業医面談のためだけに出社するのが逆にストレスであるという意見も聞きます。
厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(令和2年11月19日基発1119第2号)に基づくと、原則は直接面談ですが、一部要件を満たせばオンラインでの実施も可能とされています。
1.事業者は労働者の情報を提供する
事業者側は、オンライン面談を行う医師に対して、面談対象者について以下の情報を提供する必要があります。
・ 対象者が働く事業場の事業概要(どんな事業を行っているか)、業務内容
・ 作業環境
・ 対象者の業務内容
・ 労働時間、勤怠など勤務の状況
・ 作業環境 など
これらの情報提供は、対面で行うときにも変わらず提供しているものであるといえるので特に心配はいらないと思います。
2.面接指導の条件
また、面接指導を行う医師についても以下いずれかの条件を満たす必要があると定められています。
① 事業場の産業医
② (雇用契約を含む)契約によって過去1年以上、事業場で働く労働者の日常的な健康管理に関わっている
③ 過去1年以内に、事業場を巡視したことがある
④ 過去1年以内に、(今回の面接指導対象者に)面接指導をしたことがある
多くの場合、オンライン産業医面談は事業場の嘱託産業医が行うことになり、上記の条件のうち①を満たしています。
しかし、なかには嘱託産業医がストレスチェックの実施者や高ストレス者面談を引き受けてくれないがために、別途医師に依頼をしている事業場の場合は要件を満たさないので注意が必要です。
オンラインの産業医面談というと、PCでZoomやSkypeなどテレビ会議システムの利用が一般的と思いますが利用するツールなどが以下の要件すべてを満たしていることを求められています。
① 面談者(医師)と面談対象者(労働者)が互いに表情、顔色、声、しぐさなどを確認でき、なおかつ映像と音声が安定、円滑であること
② 情報セキュリティが確保されていること
③ 複雑、難解な操作が求められず簡単に使用できる機器であること
Zoomを使用する際、フィルタ機能や美肌加工アプリを使用している方もいるかもしれません。
①にあるように顔色などを確認するうえではこれらは使うのは不適切と考えられます。そのため、社内ルールでそのようなものを使用禁止にするなど工夫が求められています。
また、②については在宅勤務環境を整備するうえでも求められる要件です。個人情報の塊ともいえる面談内容なので特に注意が必要であるといえるでしょう。
オンラインで産業医面談を実施する際、自宅⇔会社というパターン、会社(本社)⇔会社(支店)というパターンもあると考えられます。実際に会っていないため、緊急時の対応が困難である場合も考えられます。そのような時の対応も準備しておくことが大切であるといえるでしょう。そのために、日ごろの産業衛生スタッフなどとのコミュニケーションが大事であるといえるでしょう。